手紙
会社の前の道に封筒が落ちていたので何気なく拾ってみたら、切手や宛名はなく、子供の字で「お父さんへ」とだけ書かれていた。どうやら家庭内郵便のようだ。
差出人の名前は封筒には書かれていない。封は切ってあったので一度は読まれている様子。
ウチの会社で小さな子供がいるのは社長だけなので、もし社長が落とした物なら内容で確認できるだろうと中身を見る。
便箋が二枚。
他人の手紙を読むのは気が引けるので、本文は読まずに文末に目をやると差出人の名前がカタカナであった。
名前は社長の子供のものではなかった。
だとすれば、この道を通った誰かが落としたのだろう。
子供からの手紙を落としてしまったお父さん。それに気がついて、自分が通った道を戻って手紙を探すだろうか。
もしもお父さんが探しにきた時のために、目に付くところに手紙を置いた。