「おや・・・米田さ〜ん?」
 どこか能天気な声が後ろからかけられる。米田が振り返ると、人ごみの向こうで、手を振っている人影がある。ふと見えたカンカン帽と特徴のある黒ぶちめがねに、米田は笑顔を浮かべる。
「ああ・・・金田先生」
「いや〜・・・奇遇でゲスなぁ」
 帝国歌劇団・花組お抱えの脚本家、金田金四郎その人である。通称、金田先生だ。
「お祭り見学でゲスか?」
「ええ、それもありますが・・・知人を案内しているところなんですよ」
「知人?」
 そこで金田は、ようやく人の良さそうな西洋人に気づいた。西洋人は愛嬌のある顔でニカっと笑い、
「初メマシテ。私、パーシー・ホワードト言イマス。ヨロシュウネ」
「あ、これはどうも。私、花組の脚本を手がけております、金田と申します」
 カンカン帽を取り、軽く握手をする。その横から、由里がにこにこ笑顔で付け足す。
「金田先生、このパーシーさんは、紅蘭の家族みたいな人なんですよ」
「ほう、紅蘭さんの・・・なるほど、通りで・・・」
 妙なアクセントに聞き覚えがあった金田は、合点がいったと一人頷いた。
「今度は紅蘭さんが主役の舞台ですから、ぜひ、観にきてやってくださいね。僭越ながら、私が脚本を手がけておりますし」
「ホウ、ソレハオモシロソウネ。時間ガアルナラ、ゼヒ、観タイデス」
 どうやらこの2人は、なかなか気が合うらしい。これから浅草寺を経由し、花やしきに行くのだと告げると、
「花やしきですか!いいでゲスな〜。私のうちも近所なんですよ。よければ、花やしきまでご案内いたしましょうか?地元民が知る穴場、なんてのもお教えしやすよ?」
「ワオ!ソレハオモシロソウデス。ソウイエバ、椿サンモ確カ浅草出身ダト?」
「ええ、そうなんです。ふふ、結構通な会話とかできちゃったりするんですよね、金田先生」
「じゃあ・・・行きましょうか。まずは、浅草寺ですね」
 金田も加えた米田一行は、浅草寺へ向かうべく、雷門をくぐったのだった。

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