「すごい人だね…。」
地下からあがってレニがそうつぶやいた。
「ほんとだな…。でも、今日はなんの祭りだったっけ?。」
大神が思い出せず首をひねってるとレニが大神のジャケットのすそを引いた。
「隊長、あそこで白い服を着た人が踊ってるよ。」
レニが指差す方向に袴をはき頭に長細い物をつけて踊っている人たちが見えた。
「ああ、そうか。今日は白鷺の舞だったんだ。」
「しらさぎのまい?」
レニは聞いたことないらしく不思議そうな顔をして尋ねた。
「明冶50年を記念して作られたお祭りで浅草寺の絵巻物………
え〜と、慶安縁起絵巻(けいあんえんぎえまき)だったかな?
それに書かれていた祭礼行列の鷺舞(さぎまい)をモチーフにして作られたらしいんだ。
笛と太鼓調べにあわせて踊り子たちが踊りながら街を巡るんだよ。
春と秋、年2回行われていて秋のほうがメインだからすっかり忘れてたよ。」
「そうなんだ………。
もうちょっと近くで見たいな。」
「そうだな、あっちの方がすいてそうだから行ってみようか。」
「行列、いっちゃったね。」
「そうだな、このままここにいても仕方ないし浅草寺にでも行ってお参りしようか。」
大神がそういってレニの手を取って歩き出したとき、ふとレニが立ち止まった。
「どうした?」
大神がレニの視線をたどってみてみると、そこには鉱石を使ったアクセサリーを売る屋台が出ていた。
「ちょっとだけいい?」
レニが少し恥ずかしそうに尋ねると大神はもちろんといってうなずいた。
「へぇ〜、けっこういろんなものが置いてあるんだなぁ〜。」
大神がふと隣を見てみると目を輝かせてアクセサリーを見ているレニが目に入った。やっぱり女の子なんだなと思いつつ、レニが帝撃に来たころのことを思い出しその変化に口元をほころばせた。そしてよくよくみてると、レニが一つのものをじっと見ているのに気がついた。
「これが気に入ったのかい?」
大神はレニが見ていた星型のラピスラズリのペンダントを指していった。
「きれいな色をしてるなと思って…。」
少し顔を赤くしてレニは答えた。
「すみません、これください。」
レニの答えを聞いた大神はそういって店員にラピスラズリのペンダントを渡した。
「え、ちょ、ちょっと待って、た………大神さん!」
レニはあわてて止めたが大神は聞かずさっさと買ってしまった。
「はい、プレゼント。」
人ごみを抜けたところで大神はさっき買ったペンダントをレニに渡した。
「ボク、この分のお金払うよ。」
「どうして?俺がレニにプレゼントしたいと思ったから買ったんだよ。」
「だって、隊長に悪いと思って………。」
「そんなことないよ、俺はこれでレニが喜んでくれたら十分なんだ。
それとも迷惑だった?」
「ううん、そんなことない。」
「じゃあ、受け取ってくれるかい?」
レニがうなずくと大神はペンダントを袋から出しレニの首にかけた。
「うん、よく似合ってる。買ったかいがあるよ。」
「あ、ありがとう。」
レニは顔を真っ赤にしながら、でもうれしそうにお礼を言った。
「瑠璃は心の不安を取り除き幸運と成功をもたらしてくれるといわれてる。
これがレニのお守り代わりになってくれるといいな。」
それを聞いたレニは少し思案したあと恥ずかしそうに話し出した。
「………隊長、知ってる?」
「ん?」
「一説にはラピスラズリは恋人たちの守護石といわれてビーナスに捧げられていたんだって。」
「第五幕」 | 「リスト」 | 「第七幕」 |