Orange Sunshne 第2幕
「メトロで行こう」


「ねぇねぇお兄ちゃん、どこに行くの?」
「え、えと・・・そうだな、じゃあ・・・久しぶりに浅草にでも行こうか?」
「浅草!?アイリス、アンヂェラス食べた〜い!」
「浅草かいな。ほな、浅草まではメトロでいこか」
 アイリスはよっぽど嬉しいのか、列の先頭きってはしゃぎ回っていた。
「こらアイリスそんなにはしゃぎすぎると転ぶわよ」
「まぁまぁ、ええやないのマリアはん。折角久々に皆で出かけるんやさかい、少しぐらい多めに見てや」
 紅蘭にそう言われてマリアも少しため息をついたものの『それもそうね』と笑う。やはり皆基本的に久しぶりに花組総出で出かけるので、機嫌がいいようだ。
 ごく一部を除いて・・・。
 大神は先ほどから、内心冷や汗をかいていた。
 もちろん、レニとの約束のことも、なのだが・・・帝劇を出てからずっと背後から織姫が殺気にも似た視線を大神に投げかけているのだった。
「お、織姫くん・・・あの、俺、何かした?」
 織姫の視線に耐え切れなくなった大神が少々どこかひきつった笑みで言うと、
「・・・・べっつにぃぃ〜〜」
 と織姫は口を尖らせてプィッと顔を背けた。が、今度は織姫は大神に冷ややかな視線を送っていた・・・。


「あれ、今日は人が多いですね?」
 駅につくなり、さくらがそう言った。
 いつもこの時間帯は1日の中で比較的人が減る時間なのであるが、さくらの言う通り何故か今日のメトロ銀座駅構内には人が溢れかえっていた。
 それもみんな、浅草方面へ向かうようだった。
「今日って浅草で何かありましたっけ?」
 さくらが首をかしげる。
 と、そこで紅蘭が『あっ』と声を上げる。
「そうや、確か浅草寺で祭があったんや」
「え、お祭?」
「な、な、後でみんなで行ってみいひん?」
 紅蘭の言葉に異論を唱える者は誰も居なかった。
 なにはともあれ、その前にその浅草に行くにはまずこの満員のメトロに乗らなければならないのである。
「はぐれないように気を付けないといけないわね」
 切符を買いに行こうとしてマリアがそう言うと、
「あ、それじゃあレニとわたしが皆さんの分買ってきますから、皆さんはここで待っててく〜ださ〜い!」
「えっ」
 と突然言い出して織姫は返事を聞くまでもなく、レニを否応なく引っ張って行ってしまった。


「・・・遅いね」
 アイリスがつぶやく。
 花組は駅の一角で切符を買いに行った2人を待つが、行った2人は一行に戻って来なかった。
「何かあったのかしら・・・」
 と、心配しかけた丁度その時。
「すみませんで〜す!」
 と人垣の中から手をふりながら織姫が戻って来た。
 そして大神はすぐに1人足りないことに気付く。
「・・・織姫くん、レニは?」
 すると織姫はケロッと。
「はぐれちゃいました〜」
「え!?」
 驚く大神をよそに織姫は淡々と説明をする。
「ずっと後ろを付いて来てたと思ってたんですけど、気が付いたらいませんでした〜今ちょっち探してたんですけど、見つからないので〜す。あ、一応切符は買って来ました〜」
 言いながら皆に切符を手渡す。
「どうすんのや、もう来てしまうで?」
 随分待たされたおかげで、もう次の浅草行きのメトロの発車の時刻まであともう何分もなかった。
 そのあと何分もない時間でこの人ゴミの中からレニを探し出すのはもう不可能に近い。と花組が慌てふためいていると、
「俺がレニを探して来る。皆は先に乗車口まで行っててくれ。レニを見つけたらすぐに追いかけるから」
「あ、大神さん!」
 大神はそれだけ言って、廻りの意見も聞かずに一目散に駆け出して行ってしまった。
「みっなさ〜ん、仕方がないですから、中尉さんの言う通りさっさと乗車口に行きましょ〜っ♪」
 そう言う織姫の顔はどう見ても『仕方がない』という顔ではなかった・・・。

「レニ!」
 大神は彼女の名を叫びながら、柱に背もたれて立っていた彼女をやっとの思いで見つけ、彼女の元に駆け寄った。
「あれ、隊長・・・?」
 大声で自分の名前を呼ばれて驚いたレニは振り向いた。
「ど、どうしたの?」
 振り向いて、息を切らせて現れた大神にまた驚く。
 それもそのはず、大神はレニを探すために全力疾走していたのだから。
「良かった、見つかって・・・随分探したよ」
「え?・・・」
 中腰で息も絶え絶えに大神が言うと、レニはその言葉にキョトンとした。
「探した・・・って?」
 様子からどうやらレニは何故自分が探されていたのかが分からないらしかった。織姫の言ったことを説明すると、レニはますます訳が分からなくなったようで、
「・・・だって織姫が・・・」


『レニ、わたしが切符買って来ますから、
 ここで待ってて下さ〜い。いいですか?わたしが
 戻って来るまでここを動いてはいけませんよ?
 絶ぇ〜対ッ!にここを離れちゃ行けませんよ!
 いいですか?
 いいですか?
 いいですねっ!!??


「・・・って」
「・・・へ・・・?」
 大神が間抜けな声を上げた丁度その時乗車口の方からメトロが発車した音が聞こえたのであった・・・。


next