ジリリリリリリ〜〜〜!!!!
「えっ!?」
 起き上がってみれば、そこは見慣れた自分の部屋の天井。
「ゆ、夢?」
 大神は、額に着いている汗を手の甲で拭いながら身を起こした。
「・・・・恐かった」
 あの日は本当に困った。
 あれから、帝劇に帰れば。
 花組の皆からは、色々とせっつかれ。米田達にも、色々色々・・・・と言われ。
 それは、逃避行まがいの事をした。皆の声を振り切って逃げたのも悪いと思う。
「でもなぁ」
 もう一度、ポスン。とベッドの上に身を置いて、大神は溜め息を1つ。
 あの日、レニに言われた質問に答えを返さないまま、今日まで来たけれど。
「言うべきかな?」
 色々あった1日だけれど。
 その1日で、大切な事は分かったから。
「よしっ」
 大神はベッドから勢い良く飛び上がると、服を着替え始めた。



 
 部屋に居なかったレニを探し求めて、帝劇をウロウロしていると。
 中庭から、賑やかな声が聞こえてきた。
 窓から外を覗くと、どうやら劇の練習の気分転換に皆で庭に集まっているようだった。
 陽の光を浴びて笑うレニの顔を見ていると、レニも大神の視線に気づいたらしい。
 皆に一言・二言、断ると大神の元へと掛けてきた。
「隊長!」
「やぁ、レニ」
 そう言って微笑んで。それから、窓から離れてレニを壁に優しく押し付けた。
「た、隊長?」
「笑っててくれるかい?」
「え?」
 あの日の答え。
 それは、きっと。
「ずっと、そうやって。幸せそうに笑っててくれないか?それで」
 一旦、言葉を区切る。


『そんな気持ちは、どうしたらいい?』


「たまに、俺の方を見て。それで、笑ってくれないか?」
 嫉妬だとか。そういう気持ちは恋をすれば、付きまとうもので。
 でも、そんな気持ちすら、レニの言葉にかかると、酷く可愛く思える。
 まるで、魔法みたいにパァと明るく色づいた気持ちを。
「笑う・・・の?」
「そう。笑って。幸せそうに、何時も」
 怒った顔も。悲しげな顔も。考えてる顔も。
 全部全部、宝物だけれど。でも、やっぱり。一番見たいのは。
「レニの笑顔が好きだから。・・・・前に、レニが聞いたよな?『そんな気持ちは』って」
 その言葉に、レニはコクンと頷いた。
「きっと、俺は。レニの笑顔1つで、全部救われるんだよ」
 単純だから。
 単純だけど。
 その気持ちが、一番大事だから。
「だから、笑って」
 その言葉の意味を汲み取ったのか。レニは頬をほんのり染め。それから、大神に向かって微笑んだ。
 柔らかな。可愛い微笑み。
「好きだよ、レニ」
「僕も。大好き、隊長」


 魔法をかけよう。
 2人の恋に、とびきり甘い恋の魔法を。
 

「レニ〜。練習に戻りましょう〜」
 織姫の声が外から聞こえ、2人は顔を見合わせて笑った。
 そして。
「ほら。織姫も早く行きなさい」
 庭から来る皆に見つかる前に、ソッと。
 一瞬だけの。オレンジの味がする口付けを交わした。


 2人で庭に植えたすみれの花が咲く頃。
 あの花のように、きっと2人の間には。
 ささやかな幸せが。きっと、あるだろう。
 それは、2人だけの。魔法よりも甘く。綺麗な、幸せという恋。


「今日も暑くなりそうだな」
 大神が見上げた先には、太陽の柔らかな日差しが降り注いでいた。
 そして、ふと思った。
 今度、一緒に出かける日も。こんな風に晴れていて欲しいな。と・・・・。





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Orange Sunshine
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