太陽が一番高いところまで昇り、すでに朝から昼に変わっている。
「おい! いつまで寝ているんだ! リーゼ!」
 何度起こしても目を覚まさないリーゼに、流石の俺も癇癪を起こした。
 すると、何かスイッチが入ったかのように、リーゼの体がガバッと起き上がった。
「へへーん。やったー」
 起き上がるなり、リーゼがそんなことを言う。
「何だ? 何をやったんだ?」
 起きたかと思えば訳の分からないこと言うリーゼにそう訊ねる。
「レイヴンの負けだー。今僕の名前を呼んだだろうー?」
 まるで子供のようにおどけて、リーゼが嬉しそうに笑う。
「なっ!」
 俺は思わずそう声を上げた。
 どうやらリーゼは寝たふりをし、俺が名前を呼んで起こすのを待っていたらしい。
 そうまでして、こんなくだらない勝負に勝ちたかったのか。いや、負けず嫌いなんだ。
「何を言っている。お前の方が先に寝言で俺の名前を呼んだじゃないか」
 そう言い返す俺も負けず嫌いか。
「何言ってるのさー。そんなこと言ったって信じないよー」
「信じようが信じまいが俺はこの耳で聞いた」
「そんなの証拠にならないよーだ。言い訳は男らしくないぜー」
 まるで子供の喧嘩のように俺達は言い合いを始めた。
 シャドーとスペキュラーはそんな俺達をぼんやりと眺めている。いつものことだとでも言いたげな表情だ。
「もうレイヴンはいつも――」
「だいたいレイヴンは――」
「レイヴンだって――」
 リーゼが俺の名前を連呼する。辺りに俺の名前が響く。
 リーゼが俺の名前を呼んでいる。
 レイヴン、レイヴン、レイヴン。俺の名前。
「もう、レイヴンのバカー!」
 ……バカは、余計だ。



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