リュリュ →
ここはどこだろう? レニは辺りを見渡すとそう思った。 暗い森の中にも見えるし、照明の点いていない舞台のようでもあった。 レニはパジャマ姿で、腕には今日アイリスからもらった、誕生日プレゼントのぬいぐるみを抱いていた。 レニがきょろきょろとしていると、腕の中でもぞもぞと何かが動く感覚がした。 腕の中に視線を下げると、クマのぬいぐるみがもぞもぞと、レニの腕の中から逃げ出そうともがいている。 「どうしたの?」 レニは慌ててぬいぐるみに話しかけるが、ぬいぐるみは答えず、必死にレニの腕から逃げようとしている。 ついにぬいぐるみが上半身をレニの腕から抜きさると、前へ前へと体を動かして逃げ出そうとする。ぬいぐるみが前へ行こうとするから、レニもそれに合わせて前のめりになり、バランスを崩して両膝をついてしまった。 「あっ!」 その拍子に力が抜けたのか、ぬいぐるみはポンッとレニの腕を飛び出すと、ポテッと地面に着地した。 着地したと思ったら、ぬいぐるみはトコトコと振り返りもせずに走り出していく。 「待って!」 レニはそう言って立ち上がると、いつの間にか自分の周りにたくさんのぬいぐるみが浮いていることに気がついた。 そのぬいぐるみ達ががやがやと何か口走っているが、レニにそれを気にしている余裕はなく、ぬいぐるみを追いかけて走り始めた。 だが、どんなに一生懸命走ってもぬいぐるみには追いつかず、それどころかどんどん差は広がっていく。 たまらずレニがぬいぐるみの名前を呼ぼうと息を吸い込んだ。 「!」 だが、レニの口から名前は出なかった。 レニはまだぬいぐるみに名前をつけていないことを思い出した。名前がなくては呼びようがない。 「待って! 待ってよ!」 呆然としてそれだけ繰り返すが、ついにぬいぐるみの姿は見えなくなってしまった。 |