舞台がはねると去年と同じように、レニの誕生パーティを兼ねた打ち上げが行われた。
 久しぶりの帝劇での宴会を大神は大いに楽しみ、花組のみんなも久しぶりに大神と笑顔を合わせる事が出来て、楽しい時を過ごした。
 大神は初舞台の演技をみんなに冷やかされ、巴里娘達に手を出していないだろうなと、稽古が忙しくて聞けなかった巴里の話も色々と聞き出された。
 舞台終了後の高揚感と酔った勢いだろうか、俺にはレニだけだなどと大神が公言するから、レニは耳まで真っ赤にして、花組のみんなはこれ以上ないくらいに大神を冷やかして遊んだ。
 宴会が終わると、みんなそれぞれ部屋に戻り、カンナは食べたりないと言っていたが、疲れてもいるので、部屋に戻るとすぐに寝てしまった。
 マリアは大変でもあったが、楽しかったクリスマス公演を日記に書き記し、紅蘭は格納庫で、光武達と乾杯をしていた。
 すみれは両親から貰ったプレゼントを眺めながら、部屋でお気に入りのワインを1人味わっていた。
 さくらは父一馬の写真を見つめ、子供の頃のクリスマスを思い出し、織姫も母親の写真と緒方から貰ったプレゼントを、交互にいつまでも眺めていた。
 アイリスは窓を開けると星空を見上げ、そこにサンタクロースの姿を探していた。
 そしてレニは大神と一緒に、今年もまたあの教会へと足を運んでいた。
「隊長も役者の仲間入りだね」
 教会に向かう途中、レニが少し悪戯っぽく大神に笑う。
「あはは。パンフレットにまで名前が載っちゃったしね」
 椿が心配していたパンフレットの江戸川の名前は、上から大神一郎と書かれたシールが貼られ、そのまま使用されていた。
「隊長。隊長は生まれ変わったら何になりたい?」
 ふと、レニが大神を見つめるとそう聞いてきた。
「え?そうだな・・・・・」
 大神はそれにそう言って、考える素振りを見せる。
「隊長が帰って来る前に、みんなとそんな話をしていたんだ」
 その大神を見つめながら、レニがその時の事を思い出す。
「ボクは、その時何になりたいか思いつかなかった」
「今は何になりたいか思いついたのかい?」
「うん」
 大神の問いに明るく返事を返すと、レニがそれに答える。
「ボク、生まれ変わっても、やっぱりレニ・ミルヒシュトラーセが良い」
 その答えに大神が少し驚いて、すぐに優しい表情を見せる。
「もう一度レニに生まれて、もう一度花組に入って、また隊長と出会いたい」
 大神を見つめ、はっきりと言う。
「先に言われちゃったね」
 レニを見つめ返し、大神は笑った。
「え?」
 レニがさっきの大神と同じように、少し驚いた表情になる。
「俺も同じさ。もう一度大神一郎に生まれて、花組の隊長になって、そしてレニと出会いたい。何度でもレニと出会いたい。何度生まれ変わっても・・・」
 レニと同じ答えを見つけていた大神がそれを口にする。
「隊長」
 レニの目頭が熱くなる。
「レニ」
 そんなレニを大神は心からいとおしいと感じる。
 冬の夜空に星が瞬いて、街灯りが2人を照らし、大神とレニは見つめ合う。
 愛に包まれて、優しさに育まれて、生まれてきた事に感謝する。
 17歳の誕生日。愛する人と過ごすこの時間こそが、掛け替えのないプレゼントだとレニは思う。
 忘れてしまいそうなほどちっぽけな、出会いという奇跡が1番のプレゼントだとレニは思う。
「誕生日おめでとう、レニ」
「ありがとう、隊長」
 そんな当たり前の言葉と共に―――。



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