元ネタ考察 サクラ2サブタイトル編



 サクラ大戦という作品を語る上で忘れてならないのはパロディという要素。
 あの「勝利のポーズ、決め!」はヤッターマン、紅蘭の「こんなこともあろうかと」は宇宙戦艦ヤマトにその元ネタがあります。
 あかほり氏は割とパロディ好きな気がするんだけど、どうなんでしょう?
 広井氏についても舞台や映画に影響されることが多いようで、分かりやすいところでは今年の新春歌謡ショウでの点呼のギャグはドリフターズのネタを借りていますね。
 これはパロディと言うよりオマージュと言うべきか。

 サクラ大戦2のサブタイトルが何らかのパロディであることは良く知られていますが、今更ながらその元ネタを探ってみました。
 そうは言っても書いてみると特筆することもないので、元ネタと思われる作品のデータ等を以下に記載します。
 トークというよりデータ集かも。元ネタにスポットを当てているため、最後までサクラ大戦色の薄い内容が続きます。

 とりあえず、表を作ってみました。


話数サブタイトル元ネタ真実度
1話花萌える帝都元ネタなし
2話アイリスの手紙アイリスへの手紙68%
3話あぁ、お見合いああ結婚72%
4話大暴れ! 火の玉芸者ガールズ元ネタ不明
5話嬉し恥ずかし夏休み元ネタ不明
6話レニよ、銃をとれアニーよ銃を取れ99%
7話季節はずれの七夕季節はずれのバレンタイン65%
8話帝都の一番長い日!?日本のいちばん長い日99%
9話劇場のメリークリスマス戦場のメリークリスマス99%
10話巷に雪の降るごとく巷に雨の降るごとく92%
11話地上最大の作戦史上最大の作戦99%
12話乙女たちの晩歌男たちの挽歌99%
13話君がために汽笛は鳴る誰が為に鐘は鳴る99%


 真実度はあにまるの独断による数値。調べていて「これだ!」と思った度合いです。



第一話 花萌える帝都

 調べた結果、これについては元ネタはないのではないかと思います。
 第一話くらいはオリジナルタイトルで、ということでしょうか。



第二話 アイリスの手紙

「アイリスへの手紙」Stanley and Iris 1990年 アメリカ
 監督:マーティン・リット 出演:ジェーン・フォンダ、ロバート・デ・ニーロ
 夫を亡くし二人の娘を育てるアイリス(ジェーン・フォンダ)はケーキ工場で働いている。その工場の食堂でコックをしているスタンレー(ロバート・デ・ニーロ)は読み書きが出来ない。それを知ったアイリスはスタンレーに読み書きを教え始めるのだが、それをきっかけに二人は親密になっていく。


 これちょっと確信が持てないので真実度低め。僕が知らない映画だったのがその原因。
 パロディというのは、元ネタが有名であって始めて生きてくると思うのですよ。
 内容的にはフランス語の分からない大神に代わってアイリスが手紙を書くという点がわずかに似ていると言えなくもない、か。



第三話 あぁ、お見合い

「ああ結婚」MATRIMONIO ALL'ITALIANA 1964年 イタリア
 監督:ヴィットリオ・デ・シーカ 出演: ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ
 コメディ映画。貴族のドメニコ(マルチェロ・マストロヤンニ)は娼婦のフェオルミーナ(ソフィア・ローレン)と出会う。娼婦のフェオルミーナと結婚する気などないドメニコだが、フェオルミーナの大芝居で結婚することに。だまされたことを知ったドメニコは結婚の約束を破棄しようとするが、実は三人の子持ちのフェオルミーナはその一人がドメニコの子供だと言う。


 これもちょっと真実度低めですが、割と有名な作品ではあるみたいです。
 内容はまったく別物ですね。
 あにまる的にはすみれをお見合いの席から連れ出すシーンが「卒業」という映画の、式場から花嫁を奪い去るというラストシーンに似ていると思ってました。
 と、思ったら「熱き血潮に」のすみれの合体攻撃がまったくその「卒業」のラストシーンを連想させるものでした。
「あぁ、無情」が元ネタという意見もあるようですが、「ああ」が一緒なだけで、それを言ったら、「ああ野麦峠」も「ああ女神さまっ」も考えられちゃう訳です。
 ここでは「結婚 → お見合い」という変化にウェイトがあるので、この作品が元ネタである確立が一番高いですね。



第四話 大暴れ! 火の玉芸者ガールズ

 元ネタ不明。
 これに関してはある方に色々と情報を提供していただきました。感謝。
 それによると、「火の玉ボーイ」(鈴木慶一とムーンライダースのアルバム)と芸者ガールズ(坂本龍一&ダウンタウンのユニット)の複合ネタという意見があるとか。
 ダウンタウンが芸者の扮装をして歌うという点では、さくらと紅蘭が芸者に化けるストーリーと重ならないこともないですが、複合(しかもアルバム名とユニット名の)という点でも、他のサブタイトルが有名な映画やミュージカルのタイトルを元にしている点でも、これが元ネタとは考えにくいです。
 同じ情報提供者様から、映画「大暴れ風来坊」、バンド「暴力温泉芸者」なども上げていただきましたが、どちらも決め手にはなりませんでした。
 元ネタに心当たりのある方教えてくれると嬉しいです。



第五話 嬉し恥ずかし夏休み

 元ネタ不明。
 真っ先に浮かぶのはDreamsComeTrue(以下ドリカム)の「うれしはずかし朝帰り」でしょうか。
 でも、これも第四話で言ったように、他のサブタイトルが有名な映画やミュージカルのタイトルを元にしている点から、可能性は低いと思います。
 ところが「熱き血潮に」のこいこい大戦のストーリーモードで「決戦は午後三時」という明らかにドリカムの「決戦は金曜日」が元ネタであるタイトルが登場したので、この「うれしはずかし朝帰り」も一概に否定出来なくなってしまいました。
 とはいえ、「サクラ2」と「熱き血潮に」では、その作品の印象からスタッフが大きく入れ替わっていると想像出来るので、「熱き血潮に」でドリカムの曲が元ネタに使われていたとしても参考にはならないようにも思います。ううむ。
 他に「うれしはずかし物語」という映画もありますけど、そのアダルトな内容から元ネタ候補からは外します。
 これも元ネタに心当たりのある方いらっしゃいませんか?



第六話 レニよ、銃をとれ

「アニーよ銃を取れ」ANNIE GET YOUR GUN ブロードウェイミュージカル 初演1946年
 出演:エセル・マーマン
 射撃の名手アニー・オークリー(エセル・マーマン)はその腕を買われて旅の一座に加わる。同じ一座で同じ射撃の名手フランク・バトラーに恋するのだが、アニーの方がフランクより腕前が上だったことによりその恋は上手くいかない。やがて二人は射撃大会で対戦することに。
「ショウほど素敵な商売はない」などの名曲を生んだ作品。
 1950年にはジョージ・シドニー監督によって映画化されている。アニー役はベティ・ハットン。
 日本でも江利チエミ、桜田淳子、高橋由美子などの主演で幾度か公演されている。


 これはこれしかないでしょう。
 第六話をプレイしてなぜレニが銃なのかと思った方もいるのではないでしょうか?
 パロディタイトルを使うと元ネタを知らない人には疑問を持たせてしまう場合もあるといういい例ですね。



第七話 季節はずれの七夕

「季節はずれのバレンタイン (ゼニアのために)」A VALENTINE OUT OF SEASON (Music for Xenia) プリペアドピアノ曲
 作曲:ジョン・ケージ
 1944年。太平洋戦争が終わる頃、ジョン・ケージが奥さんのために作った曲。


「戦争は世界中を大きな音で覆った。だから私は妻のためにこの曲を小さな音で作った」
 ジョン・ケージはこの曲についてこう語ったらしいです。
 第七話は織姫と、父星也の物語。このケージの妻への愛情は星也のそれと重なるし、ピアノ曲(プリペアドピアノですけど)というのも織姫を連想させます。
 他のサブタイトルが有名な映画やミュージカルのタイトルを元にしていると書きましたが、その二点からあえて第七話の元ネタはこの曲と考えます。



第八話 帝都の一番長い日!?

「日本のいちばん長い日」 1967年 日本
 監督:岡本喜八 出演:三船敏郎、山村聰、宮口精二、志村喬、笠智衆、黒沢年男
 ポツダム宣言受諾勧告から玉音放送まで、日本がどのように敗戦を受け入れて行ったのか、様々の人々の様子を描く。
 東宝35周年記念のオールキャスト映画。
 加山のモデル、加山雄三もNHKのアナウンサー役で出演している。


 割とパロディタイトルに使われる作品ですよね。
 物語前半のクライマックス、黒鬼会との決戦の元ネタが敗戦を描いた映画というのも面白い話です。



第九話 劇場のメリークリスマス

「戦場のメリークリスマス」 1983年 日英合作
 監督:大島渚 出演:デヴィッド・ボウイ、坂本龍一、ビートたけし、トム・コンティ
 太平洋戦争中のジャワ島の日本軍捕虜収容所が舞台。所長ヨノイ大尉(坂本龍一)、その部下ハラ軍曹(ビートたけし)。日本語の話せるイギリス軍中佐ローレンス(トム・コンティ)はハラ軍曹と心を通わせる。そして、新たに収容されたイギリス軍少佐セリアズ(デヴィッド・ボウイ)とヨノイにもある種の感情が芽生える。


 内容的にはまったく関係ないですね。語呂だけで。



第十話 巷に雪の降るごとく

「巷に雨の降るごとく」Il pleure dans mon coeur
 フランスの詩人、ポール・ヴェルレーヌの詩。
 ヴェルレーヌは同じく詩人のアルチュール・ランボーと恋仲(同性愛)だったとされる。いつしか二人は不和になり、別れ話からかヴェルレーヌがランボーに発砲。ランボーの左手に傷を負わせたヴェルレーヌは刑務所行きとなる。この詩はその刑務所の中で書かれたと言われている。
 二人を描いた「太陽と月に背いて」という映画もある。ヴェルレーヌにデビッド・シューリス、ランボーにレオナルド・ディカプリオ。監督はアニエスカ・ホランド。
 ドビュッシーやフォーレが曲をつけている。


 下に一部和訳を掲載。

 巷に雨の降るごとく
 我が心にも涙降る
 かくも心ににじみ入る
 この悲しみは何やらん


 何か、悲しい詩です。
 そういえば、サクラ3でメルが「ヴェルレーズの詩集」を書店に注文したとか何とか言うシーンがあったと思いますが、あれはヴェルレーヌのパロディですね。



第十一話 地上最大の作戦

「史上最大の作戦」The Longest Day 1962年 アメリカ
 監督:ベルンハルト・ビッキ、アンドリュー・マートン、ケン・アナキン、エルモ・ウィリアムズ 出演:ジョン・ウェイン、ロバート・ミッチャム、ヘンリー・フォンダ
 ノルマンディー上陸作戦を描いた作品。ドイツ軍に占領されたフランス、ノルマンディーに上陸する連合軍(米、英、仏など)とそれを陸から迎え撃つ砂漠の狐ロンメル率いるドイツ軍との激しい戦い。


 これも「日本のいちばん長い日」と同じで、割と良く色んな作品のタイトルで元ネタにされてる気がします。
 監督が四人もいますが、オムニバスではありません。

 追記:03/04/26
 今日、レンタル屋さんでアカデミー賞の棚を見ていたら気になる作品を見つけたので追記しておきます。

「地上最大のショウ」THE GREATEST SHOW ON EARTH 1952年 アメリカ
 監督:セシル・B・デミル 出演:ベティ・ハットン、コーネル・ワイルド、チャールトン・ヘストン、ジェームズ・スチュワート
 空中ブランコのホリー(ベティ・ハットン)は団長(チャールトン・ヘストン)の恋人。だが、人気低迷の解決に雇った大人気スター、セバスチャン(コーネル・ワイルド)にホリーの心は揺れ動く。
 サーカス団の恋、金、ライバル、人情を描きながら、ドキュメンタリータッチでサーカスの舞台裏も見せる。


 もしかしたら十一話の元ネタは、この映画と「史上最大の作戦」との複合かもと思いました。
 というのも、この映画のラストで、サーカス団が乗った列車が衝突してしまうらしいのです。
 サクラ大戦でも轟雷号が武蔵に突入するシーンがあり、思わずそのシーンと重ねてしまいました。
 もし、十一話が「史上最大の作戦」と「地上最大のショウ」との複合タイトルなら、たまに見られる、どうしてミカサは空を飛んでいるのに「地上」なのか、と言う疑問(突っ込み?)にも、この映画のパロディだから、空での戦いなのにわざわざ「地上」とした、と答えられますよね。
 複合なのか、どちらか一つなのか分からないけど、広井さんだったら「面白ければどうでもいいじゃん」とか言いそうだ(笑)。
 複合を認めると第四話も、となりますが第四話の複合は説得力ないので否定したいです。


第十二話 乙女たちの晩歌

「男たちの挽歌」英雄本色 1986年 香港
 監督:ジョン・ウー 出演:チョウ・ユンファ、レスリー・チャン、ティ・ロン
 偽造紙幣を作る組織の幹部ホー(ティ・ロン)とマーク(チョウ・ユンファ)。ホーには刑事を目指す弟のキット(レスリー・チャン)がいた。弟のために足を洗おうと決めるホーだが、最後の仕事で敵対組織の罠に落ち警察に捕まってしまい、父親も殺されてしまう。マークはホーを罠にはめた組織を壊滅するが、自らも左足の自由を失う。3年後、出所したホーが見たのは、偽造紙幣組織のボスになっているかつての部下、片足を失ったマーク、そして自分のことを恨んでいるキットだった。


 チョウ・ユンファの出世作、なのかな? 人気シリーズで第五作まで撮られています。
 ユンファの二挺拳銃と大神さんの二刀流を重ねるのはちょっと強引ですね(笑)。



第十三話 君がために汽笛は鳴る

「誰が為に鐘は鳴る」FOR WHOM THE BELL TOLLS 1943年 アメリカ
 監督:サム・ウッド 出演:ゲーリー・クーパー、イングリッド・バーグマン 原作:アーネスト・ヘミングウェイ
 スペインの内乱を舞台に描かれる恋物語。アメリカ人のロバート(ゲーリー・クーパー)は義勇軍に参加、政府の軍事輸送を阻止するために橋の爆破作戦を任される。ゲリラに協力を求めるロバートだが、そこで内乱で両親を失った美しい女性マリア(イングリッド・バーグマン)と出会う。


「鼻が邪魔にならないかしら?」というセリフが有名らしいです。マリアはロバートの鼻が高くてキスの時に邪魔にならないか心配だったのですね。
 マリアさん可愛いです。ちょっと想像してしまいました。
「誰が」は「だが」ではなく「たが」と読みます
 この「誰が為に鐘は鳴る」というタイトル、ヘミングウェイはジョン・ダンという詩人の詩から引用したそうです。
 下にその詩の一部和訳を掲載。

 何故なら私もまた人類の一部だから
 ゆえに問うなかれ
 誰(た)が為に鐘は鳴るやと
 そは汝(な)が為に鳴るなれば


 ラストでヒロインと離れてしまうところは似てると言えなくもない。シチュエーションが違いすぎますが。



 そんな訳でサクラ2のサブタイトルを振り返ってみました。
 調べていて、どうしてパロディタイトルを使うのかな、という疑問が生まれました。
 冒頭で書いたように、あかほり氏や広井氏が影響されやすいということもあるでしょうが、いいタイトルというのは、それ自体が作品であると思うのです。
 タイトルというのは作品を示す名前、記号な訳ですが、魅力ある作品のタイトルは洗練されたキャッチコピーのようにそれ自体が魅力的であると。
 その魅力にあやかろう、という思いがあったのかも知れませんね(適当言ってます)。
 ちなみに、これだけ並べておいてなんですが、あにまるはここに上げた作品どれもまともに見聞きしていません……。



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