12月20日

ファンレター



 拝啓、レニ・ミルヒシュトラーセ様。



 いつもレニさんの歌やお芝居、とても楽しく拝見させていただいています。
 この夏の「あぁ、無情・再演」のマリユスも素晴らしかったです。
 コゼットに恋をしたマリユスの楽しい気持ちや切ない気持ちが伝わってきて、まるで自分のことのように胸が熱くなったり苦しくなったりする思いでした。
 アイリス嬢との曲「恋の出逢い」は、うきうきとした気分にさせてくれて、とてもお気に入りです。
 劇を観てからしばらくは、気がつくと口ずさんでいるほどでした。
 今度のクリスマス公演では、またレニさんの聖母が観れると聞いてとても楽しみにしています。
 前売り券もなんとか手に入れることができ、二十四日がとても待ち遠しいです。
 レニさんは普段は男役だけど、聖母様のような女性役もとても綺麗だし可愛らしいので、通常公演でも女性役を演じてほしいとわがままを言いたくなります。
 だからクリスマス公演は特別公演と言うのかな。
 勿論、男役のレニさんもとても素敵です。



 ところで、レニさんに一つご報告したいことがあるのです。
 実はこの春に結婚することになりました。
 結婚相手の女性は、僕にとってはレニさんの聖母と同じくらい素敵な人です。
 そしてその人と出会ったきっかけが、レニさんの帝劇での初舞台「青い鳥」だったのです。
「青い鳥」も素晴らしい舞台でした。
 僕達はたまたま隣の席に座り、同じように「青い鳥」の舞台に感動したのです。
 劇を見終わった僕は今感じたこの感動を誰かと語り合いたくて、思わず隣の席に座っていた見ず知らずの彼女に声をかけたのです。
 その日は僕も彼女も一人で舞台を観に来ていました。
 彼女も僕と同じ気持ちだったのか、僕達はすぐに意気投合して話に花が咲きました。
 帝劇の帰りにレストランへ寄り、遅くまで語り合いました。
 とりわけレニさんの演技の素晴らしさについて話しました。
 僕達はすっかりレニさんのファンになっていたのです。
 それから一緒に劇を観に行く間柄になるまで、そう時間はかかりませんでした。
 そして「奇跡の鐘」「夢のつづき」「海神別荘」と、一緒に帝劇に足を運ぶたび、僕達の仲は観劇仲間から恋人同士へと変化していったのです。
 今ではもう彼女なしでは生きていけません。
 丁度マリユスのように、楽しくて切なくて胸が熱くなったり苦しくなったりしました。
 あふれる想いが抑えられず、この前ついに決心しました。
 彼女にプロポーズしたのです。
 僕のコゼットになってくれ、と言いました。
 彼女はかすかに頬を染めて、小さく頷いてくれました。
 だからレニさんは僕達にとって、縁結びの神様のような人なのです。
 レニさん、僕達を感動させてくれてありがとうございます。
 生まれてきてくれて、役者になってくれてありがとうございます。
 舞台でのマリユスとコゼットに負けないくらい、僕達も幸せになります。



 今度のクリスマス公演も彼女と観に行くつもりです。
 その日はレニさんの十八回目の誕生日ですね。
 感謝の気持ちを込めて、僕達もレニさんの生まれたその日をお祝いしたいと思います。
 そしてレニさんの幸せを心からお祈りしています。
 これからもレニさんが素晴らしいお仲間と、素晴らしいお芝居をされますように。
 レニさんも僕達のように、素敵なお相手と結ばれますように。



 あなたのファンより。



補注とか