Feeling Your Heart More


 カーテン越しに差し込んでくる日差しが、朝の訪れを知らせていた。
 少し前までなら、毛布を跳ね上げてそのままの格好で部屋から出ていたのに、今は違う。
「ぅん」
 ボクはベッドの中で、まだ少し眠い目を擦った。
「おはよう」
 それから、腕の中のぬいぐるみに朝の挨拶をする。何だかさわり心地が良くて、ギュッと顔を埋めてみた。
 アイリスがそういうものだって言うからたまに抱いて寝てるけど、確かにこうやって寝るとどこか落ち着いた気分になる。
 そのぬいぐるみの頭越しに、壁の写真が目に入った。それが目に入ると、ボクは反射的に体を起こす。
「っ……」
 そして、それにも挨拶をしようと口を開いたけど、何も言わずにそのまま口を閉じた。
 もう、写真に挨拶をしなくてもいいんだ。
 直接言わないと勿体無い気がした。
 布団をめくりベッドから抜け出す。ぬいぐるみを机の上に座らせると、着替えを始めた。
 隊長にもらったワイシャツのボタンを、一つ一つ外していく。
 いつも着ているシャツとは合わせが逆だけど、ボクは男役だからあまり気にならない。
 隊長はこのワイシャツをくれる時、ちょっと照れたような顔をしていた。
 お揃いの格好で寝ているなんて、なんだか照れくさい。
 隊長も……、そうなのかな……。
 本当はパジャマの方が機能的だし、ボクに合っている気がする。
 でも、隊長がワイシャツで寝ているって聞いたら、欲しくなっちゃったんだ。
 ワイシャツが欲しかった訳じゃない。隊長とお揃いのものが欲しかった。
 離れて暮らしていた時はそんなことなかったのに、一度再会してしまうともっと隊長のそばにいたいと思ってしまう。もっと隊長を感じたいと思ってしまう……。

 着替えを終えると、ドアを開けて部屋を出る。すると、丁度廊下に隊長の姿が見えた。
 さっきまでボクが着ていたワイシャツと同じ物を着ている。
 それに気がつくとボクは余計に隊長を身近に感じる。
 少し嬉しくなって、ボクは小走りで隊長に近づいた。
 そして、さっき我慢した言葉をボクは隊長に言う。
「隊長、おはよう」
「やあ。おはようレニ」
 今日もボク達はお揃いの笑顔で朝を迎えた。



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